TitleEat With Tears. by Yuukinosight Lyrics

分厚い生地を何枚も焼いた、テフロンのフライパンをバターが滑った、
夏の土曜の昼、母さんが、メイプル・シロップが染み込むようにと、
フォークで何個もの穴を開けて、お皿に一枚ずつ焼き上げた
パンケーキを数えなおしながら、僕を待っている思い出の中で、
匂い夏草、山で蝉が鳴る、僕が乗りすてて来たブランコは、
いまだしばらく風を切って戦ぐはず、ハクサンチドリの傍で、
塀の低い一戸建ての路地を、首輪のない猫のように探検する、
日陰のタンポポの密やかな明かり、眠る朝顔の鉢植えの夢、
パラボラの宇宙の空にベランダ、アメリカ野球の白昼の月、
灯油のタンクを左右に見切り、赤い車が乗り上げる場所へ、

かつて僕がこの世界に来て、これと似たような十字路に立ち、
これと似たような坂道の上に、君の姿を見た気もするが　、
今は紅のフリースまくり、遠い時空のただ真夜中に、
一人で生きていく世の切なさを流した涙を購うようにと、
分厚い生地を何枚も焼いた、テフロンのフライパンをバターが滑った、
夏の土曜の昼、母さんが、メイプル・シロップが染み込むようにと、
フォークで何個もの穴を開けたのと、同じようにしてみる静かな部屋で、
一人ほお張るパンケーキの味は、子供の頃、夏の日と変わらずに。